文部科学省から各都道府県の教育委員会に、コロナ休校による不利益が生徒に及ばないよう、入試問題に「配慮」を加えるようにとの通知があったのが5月13日。出題範囲や出題内容に「適切な工夫」をすることを求めました。
その後、東京都がいち早く「配慮」を示し、入試範囲から、数学では三平方の定理を除外、英語ではなんと関係代名詞を除外するという「英断」をしたため、コロナ対策においても常に東京追従の姿勢を崩さなかった千葉県がいったいどのような「配慮」をするのだろうかと通知を待っていました。
ようやく通知が出ましたので、2021年度入試の出題範囲について詳しく見ていきます。
出題範囲から除外される内容
数学の除外範囲
中3で学習する内容のうち「標本調査」を除外。
教科書の発行者 | 単元名 | 該当ページ |
啓林館 | 8 章 標本調査 1 節 標本調査 | p.194 ~ p.206 |
学校図書 | 8 章 標本調査 1 標本調査 | p.220 ~ p.235 |
東京書籍 | 8 章 標本調査 1 節 標本調査 2節 標本調査の利用 | p.198 ~ p.210 |
数研出版 | 第8章 標本調査 1 母集団と標本 | p.202 ~ p.214 |
東京都が三平方の定理と標本調査を除外、神奈川では標本調査のみを除外していましたが、千葉県入試では標本調査のみの除外となりました。
三平方の定理は頻出分野でもありますし、高校数学でも使う定理ですから、除外できず、無難に標本調査を除外してお茶を濁したという印象です。
理科の除外範囲
除外する範囲:
〇「科学技術と人間」のうち、「エネルギー資源」、「科学技術の
発展」及び「自然環境の保全と科学技術の利用」
〇「自然と人間」のうち、「自然環境の調査と環境保全」、「自然の
恵みと災害」及び「自然環境の保全と科学技術の利用」
〇中学3年生で行う実験の操作方法及び観察の手法については出題しない。
教科書の発行者 | 単元名 | 該当ページ |
大日本図書 | 単元6 地球の明るい未来のために -自然と人間と科学技術- 1 章 自然環境と人間のかかわり 2 章 くらしを支える科学技術 3 章 たいせつなエネルギー資源 | p.258 ~ p.291 |
啓林館 | 環境編 自然と人間 2 章 人間と環境 3 章 自然が人間の生活におよぼす影響 4 章 科学技術と人間 5 章 科学技術の利用と環境保全 | p.217 ~ p.259 |
学校図書 | 最終単元 自然・科学技術と人間 第1章 自然と人間 第2章 科学技術と人間 第3章 自然環境の保全と科学技術 | p.242 ~ p.283 |
東京都が上記に範囲に加えて「運動とエネルギー」「力学的エネルギー」「太陽系と恒星」を除外したのに対し、理科にも範囲の除外に消極的な千葉県の姿勢が見て取れます。
社会の除外範囲
〇公民的分野の内容のうち「私たちと国際社会の諸課題」
教科書の発行者 | 単元名 | 該当ページ |
東京書籍 | 第5章 地球社会と私たち 終 章 より良い社会を目指して | p.167 ~ p.204 p.205 ~ p.212 |
日本文教出版 | 第4編 私たちと国際社会 第5編 私たちの課題 | p.175 ~ p.204 p.205 ~ p.216 |
教育出版 | 第6章 国際社会に生きる私たち 終 章 私たちにできること | p.177 ~ p.206 p.207 ~ p.214 |
育鵬社 | 第5章 私たちと国際社会の課題 社会科のまとめ | p.171 ~ p.208 p.209 ~ p.215 |
社会も申し訳程度の除外となりました。
「その他の検査」における「思考力を問う問題」
面接、作文等の学校設定検査検査のうち、「その他の検査」の「思考力を問う問題」は除外する。
国語と英語
国語と英語については、一切試験範囲から除外されません。
言語という連続性の高い教科での「除外」の難易度は高いのではないかと予想していましたが、その通りになりました。
しかも、国語について言えば、東京都も神奈川県も中学3年生で習う漢字を除外しており、漢字は学年によって学ぶものが決まっているので、せめてそのくらいはできたのではないかと思いますが、千葉県は漢字さえも除外しませんでした。関東圏内では、千葉県は最も通常の出題範囲を固持しようとしている、と言えます。
また、英語について言うと、東京都は関係代名詞を出題範囲から除外しました。「受験生ファースト」な対処で、さすがはコロナ休校の影響を最も受けた東京都だと関心したものですが、他方で、高校入試の代名詞のような関係代名詞(ややこしいな)を入試から除外するといったい何が残るのだろうか、という疑問がありました。
関係代名詞を使えなければ長文が成立しないため、短文の寄せ集めの長文読解問題しか作問できず、英語で差をつけたいと思っていた生徒に不利な入試になるのではないかと思っていました。
また、入試対策としてはそれでよいとしても、関係代名詞への理解があいまいなまま高校へ入学した場合に、高校入学時点でのハンディは相当なものとなる可能性があることも心配していました。もちろん、高校入試には出題されなくとも中学は関係代名詞を教えるわけですが、入試に出ない範囲を果たして受験生たちが真剣に勉強するのか怪しいものです。
千葉県の2021年度入試の出題範囲は、コロナ休校の影響をまともに受けた千葉県の中3生にとって「受験生ファースト」とは言いにくいかもしれませんが、入試が単なる通過点だと考えると、全体としてはやはり受験生のためになるのではないかと思います。