
2022年度 千葉県公立高校入試の志望調査結果が公開されました。
前期・後期制から一発勝負へと変わった2021年度は,軒並み消極的な倍率でした。
動向が不透明な中,全般的に安全志向だったと言えるでしょう。
その反動で2022年度入試は厳しくなるのでは,と予想していましたが,案の定。
以前の人気校が人気を回復しています。
2022年度 千葉公立高校 志願状況
2022年度志望者数 | 志望倍率 | |
千葉高校 | 542 | 2.26 |
県立船橋高校 | 848 | 2.65 |
東葛飾高校 | 524 | 2.18 |
小金高校 | 763 | 2.38 |
千葉県のトップ校3校と,当塾近辺の人気校,小金高校に注目してみます。
志望倍率とは,あくまで出願前の受験生たちの「意向」に基づいた倍率ですので,実際に出願した人の倍率ではありません。
ですから,特に1回入試になってからは,この志望倍率を見ながら,「今年は倍率が高いからこの高校はやめておこう」などのブレーキがかかり,実際の出願者数はこれよりも低く出ることがよくあります。(逆に,志望倍率が低い高校の志望倍率よりも実際の応募倍率が高くなることもあります。)
ですから,まったく確定的な数字ではないのですが,ある程度の動向は知ることができます。
特に,今年は前期・後期入試が一本化されてから2回目となる千葉県公立高校入試ですので,私はその動向に注目していました。
結果を見て,一言で言えば,強気な志望倍率です。
中でも,以前の人気校が人気を回復したことが顕著です。
2020年度以前,県立船橋高校は常に県内トップの倍率でした。
また,この近辺で言えば小金高校も人気の高い高校でした。
ところが,2021年度は,前期・後期入試が一本化されて初めての年だったため,比較的倍率は落ち着いていました。
2021年度の志望者数と志望倍率を今年のものと比較してみましょう。
志望者数(左が2021) | 志望倍率(左が2021年度) | |
千葉高校 | 448→542 | 1.87→2.26 |
県立船橋高校 | 740→848 | 2.31→2.65 |
東葛飾高校 | 503→524 | 1.90→2.18 |
小金高校 | 599→763 | 1.87→2.38 |
去年の低倍率から,隔年現象により今年の志願倍率の上昇が予想されていましたが,案の定,今年はトップ校の志願倍率は軒並み上がっています。
県立船橋高校は2.65倍,小金高校が2.38倍と人気校に返り咲きました。
一本化される前の2020年度の船橋高校の志願者数は845人でしたから,船橋高校の志願者数は同程度まで回復。
さらに,小金高校の2020年度の志願者数は621人でしたから,今年はそれを142人も上回る人気ぶりです。
千葉,東葛飾高校も,2020年度を上回る志願者数です。
隔年現象の正体~隔年現象はなぜ起こる?~
入試の倍率が高い年の翌年は低くなり,またその翌年は高くなる,という隔年現象はなぜ起こるのか。
これを理解しておくことは,適切な受験校を選定し入試を有利に戦ううえで重要だと考えます。
倍率の高かった翌年に倍率が下がる原因として,昨年の見た目の倍率の高さに圧倒されて敬遠するため,とよく言われるのですが,わたしはそれだけではないように思います。
受験生はたいてい模試を受けているはずですが,この模試の合格判定基準になっているのは,前年度の入試結果です。
前年度の受験生の合格率に基づいているわけです。
すると,どういうことが起こるのか。
例えば,高倍率だったA年,受験生のレベルは高かったため,その年を基準に出す翌B年の模試の合格判定は厳しめになります。
合格基準偏差値は高くなり,その前の年ならばB判定を取れていたであろう生徒がC判定を取るようなことが起きます。
そのため,翌年B年度は,この判定に基づいて志望校のランクを一つ落とす受験生が増えるでしょう。
逆に,昨年度(2021年度)入試のように倍率が低かった場合には,今年(2020年度)の模試判定は軒並み高めに出ているはずですから,その前の年ならばC判定だった生徒がB判定をもらう,ということが起きるのではないかと思うのです。
すると,よい判定をもらう生徒が増えているわけですから,「この判定なら大丈夫だろう」と考えて志望する受験生が増え,倍率が上昇する,ということが起きるのではないかと思うのです。
ですから,特に今年度の模試の判定がC判定,D判定に偏っていて,志願倍率が去年よりも大幅に上がっている高校を志望している受験生は,注意が必要です。
志望者数と実際の入試の応募数との関係
さて,上述のように,今日公表されたのは,あくまで「志望者数」ですので,実際に出願した受験生の人数(応募数)ではありません。
では,「志願者数」から「応募数」へは例年どのように推移するのでしょうか。
昨年(2021年度)を例に取って見てみましょう。
志望者数 | 応募数 | 志望倍率 | 応募倍率 | |
千葉高校 | 448 | 366(-82 ) | 1.87 | 1.53(-0.34) |
県立船橋高校 | 740 | 571(-169) | 2.31 | 1.78(-0.53) |
東葛飾高校 | 503 | 439(-64) | 1.90 | 1.83(-0.07) |
小金高校 | 599 | 483(-116) | 1.87 | 1.51(-0.36) |
昨年は志望者数が極端に少ない年でしたが,それでも実際に出願した人数はすべて減少しています。
今年は,高い志望倍率に恐れをなして出願先を変更する受験生がさらに増えるでしょうから,実際の倍率は志望倍率よりは低下することが予想されます。
ただし,高めに出ている模試の判定に支えられて強気の出願をする受験生は一定程度いるでしょうから,昨年特に倍率の低かった船橋高校,小金高校については,実際の応募倍率は昨年の応募倍率よりは高くなる可能性が高いでしょう。
出願校の最終決定に用いる重要な判断材料の中に,入試直前に解いた過去問の点数がありますが,昨年の合格最低点は低倍率により低めに出ていることが予想されますので,2021年度の過去問を解く際には,そのことを念頭においておく必要があります。